高取城跡

高取城は高取山の山頂に位置した山城でその規模から日本一ともいわれています。
現在は石垣を残すのみですが、周囲30kmという広大なもので 今回のコースでも
思わぬ場所でその痕跡を見掛け驚きました。

今回 風のたよりにお出で頂いた 乾さんとご一緒できる機会がありましたのでコース紹介を兼ねてレポートを掲載します。

このレポートはJ&P Hotline のSIG に掲載したものを加筆修正したものです。


 

1998年1月25日、昨日の雪と変わって抜けるような青空が目に入った。今日はインターネット経由で知り合った 乾さんと初顔合わせだ。

8時半 自宅出発の電話が入る。合流予定場所まではおよそ1時間半ということで10時集合に合わせてこの時間となった。

私は30分ほどでいけるため 9時半に家を出るといいことになる。 ガソリンコンロ、固形燃料、マッチ、ポリタンクに水を汲みザックに入れる。今日は久々城跡でお茶タイムをする予定だ。一人なら折り畳みコンロですむが 2人ではガソリンコンロが必要なので久しぶりにザックを背負って走ることにする。

9時半、予定通り出発。 日差しに比べると風が冷たい。気温はかなり低いようだ。山肌には昨日の雪が所々 残っている。 一日で融けてしまった雪ももったいない気もしなくはない。雪の上を走るのもなかなか面白いものがあることは学生時代に経験しているから...

いつもの丘を越え明日香に入る。寒さのせいかハイカーもあまり見掛けない。レンタサイクルも寒そうにしている。

上の地図上の黄線を走りましたが高取山から栢森までのルートは不正確です。ご注意ください。
文中『』で示した番号は図中の番号に該当します。


集合場所の飛鳥歴史公園館が見えてくると鮮やかな赤と黄色のフレームが目に入る。きっと彼が乾さんだろう。 『1』

スピード落しながら彼に近づく、

おはようございます、輪童です。始めまして
おはようございます。今日はよろしくお願いします

そんな 挨拶を交わし、乾さんに今日のコースの予定をはなす。

今日は壷阪寺から高取城跡へ行き、お茶会をして下ろうと思います。下りのルートは途中の様子をみて考えます。
じゃ 行きましょうか

彼の自転車はMTBで 走るスタイルはレースパンツ、一方 私は 700cのスポルティフにジャージの上にウィンドブレーカ、う〜ん なんか服装がちぐはぐなような.... まっ いいか、気ままに行きましょう。


公園館を後にして 国道169号へもどり、南へ壷阪寺を目指します。さすがに国道、日曜といえども車は比較的多いので気を抜けません。道端には時折昨日の雪がうずたかく残っています。
なだらかな上り坂を登っていくうちに体が熱くなってきます。出発した時は寒かったので ジャージの上にオーバーパンツを履いてきたのが裏目にでました。

参考:

国道169号を壷坂駅を過ぎたあたりにチューリップ園があります。4月後半 一面に花が咲きます。ここでは球根の予約販売をやっており 秋になると注文した球根が送られてくるそうです。


169号を離れ 壷阪寺への道へ入ったところで オーバーパンツを脱いで これからの上りに備えます。ここからは久しぶりに登るコース、果たして ワイドギヤのMTBと一緒に走れるかどうか、ちょっと 不安がよぎります。 『2』

集落を抜けると 道は次第に勾配を増し それに連れてカーブも右へ左へとうねって行きます。 自分のペースを維持するため前を走っているのですが やはり 後ろが気になり ペースがおかしい感じです。 日頃の運動不足から 息が上がります。
(今からこの調子じゃ今日はきついなぁ)なんて 思いながら登っていると 乾さんが

後ろからサイクリングの人がきますよ

ちょっと声をかけたくなり小休止。登ってきたのはMTBの方ですが 身軽な格好で近くに住む方のようでした。黙々と登る彼の後から 再び 走り始めます。
しかし彼は見る間に視野から消えていったのでした。

回りの杉の木の枝には 昨日の雪が残り それが風に揺られてはらはらと降ってきます。木漏れ日を浴びた雪はキラキラ輝き ちょっとした山サイを感じさせてくれます。



小休止を幾度か繰り返しながら登っていくと 突然 ペダルが軽くなります。

うわぁ 滑った。 凍ってるよ、この辺!

良く見ると 道端の雪はその幅が広くなり車の轍から流れた水が凍っているところがあるんです。そこからは路面を確かめながら走ることになります。日のあたっているところはいいのですが 日陰に入ると 雪と氷がいたるところに見られるようになります。

700cのスリックに近いタイヤを履いている私は 「滑る〜」 なんてわめきながら登ります。でも乾さんは平然と登っている様子です。やっぱりMTBはいいなぁ。


 

ようやく 壷阪寺のバス停到着。止まっている観光バスのガイドさんでしょうか。ベテランと思しき人の隣に若い方が立っています。(うっ ちょっと頑張ろう)なんてオジサン心が出ます。(^_^;) 『3』

バス停で中休止。時計を見ると 10時35分。こりゃ 普段より早いペースだわ。そりゃ しんどいはずです。
相方がいると頑張れるもんですね。

バス停からはいよいよ今日のメインイベントの高取城跡を目指します。急な坂を登ると遠く雪化粧の山が姿をあらわします。【高2】

 


【高2】バス停のすぐ上にて

壷阪寺の参道入り口をを過ぎて行くと目の前には今までとは変わって 雪景色が広がります。道の両脇は真っ白になり 轍には氷が張りついています。

滑らぬ様に、転ばぬように 凍っていないところを選んで走ります。でもやっぱり滑りますね。【高3】

少しはあると思ってましたが 結構 残ってますねぇ

なんて 会話をしながら進むと前から年配の婦人が2人見えられました。 城跡まで行ってきたのかと聞くと五百羅漢へ行こうと思ったが 雪で帰ってきたとのこと。
う〜ん 五百羅漢コースは今日は断念だな。

 


【高3】轍は凍って走れません

五百羅漢への入り口付近で一台の車がごそごそ してます。みれば 50クラスのタイヤを履いた見るからに若者の車。前へ行くのをあきらめ、ターンするつもりなのでしょうが 道が凍っているので苦労しているのでしょう。車が去った跡をみると何処からかみつけてきたのか 土嚢から撒いた土。相当苦労したようです。『4』

人のことを感心してるより だんだん 自分の心配が必要になります。雪が深くなりタイヤがスリップし始めるのです。

いよいよ走ることが出来なくなり押しになりました。雪はますます多くなり 轍も圧雪になります。それに連れて風も冷たさを増しているようです。木陰の雪の中で自転車を寝かせて記念写真です。【高4】

 


【高4】雪の上で寝る自転車

おしゃべりしながら進むうちに前から追い抜いていった彼が降りてきます。彼は雪の中もしっかり乗っていました。(元気ですねぇ)

空が澄んでいるおかげで日差しは強く風の無い日向に出ると暖かく雪も姿を消します。進むことしばし、道端に 高取城跡1kmと立て札が現れます。押し始めて半分が過ぎたところです。【高5】『5』

 


【高5】 あと1km


しばらく行くと なだらかな下りとなり雪も比較的厚いのでせっかく自転車に乗って(押して?)北のですから乗らないのはサイクリストの面子がすたるということで乗ります。(^_^;) 右へ左へとハンドルを取られながらも楽しい雪上サイクリング。
おっとっと!」なんてわめきながら進みます。【高6】【高7】

 


【高6】滑るよぉ、早く撮って

【高7】さっそうと走る乾さん


ふと 後ろを見ると先ほど下っていった彼が また走ってきているではないですか。二人が「あれっ!?」と思っている横をまたもや彼は黙々と走って行きました。


雪上サイクリングで進んでいくうちに雪はますます深くなり 、さながら 「ここは信州か!」なんて気分になってきます。

この景色は撮っていこう」 と乾さん【高8】

いよいよ 高取城跡です。手前から登る山道はパスして舗装路を突き進みます。雪の上には犬でしょうか 動物の足跡が所々にありますが その中にウサギの足跡を発見。 雪の中を飛び回る姿を見てみたいものです。

車道の最後に先ほどの彼の自転車が停めてあります彼は上にいるようです。ここからは30m程度でしょうか 急な斜面を押して上がります。

 


【高8】雪景色

この道は夏場でも砂利で滑りやすいのですが 今日は雪。私の靴は踏ん張りが利かず足場を固めながら一歩一歩慎重に登ります。晩春には山吹が咲くここも 今日は白く化粧をしています。さすがのMTBもこの坂では無理ですね 【高9】『6』

あと少しで終わりというところで先ほどの彼と出会いました。

やぁ どうも。上でお茶しますけど一緒にどうですか?
じゃ お邪魔します

と 言うことで3人で登ります。

 


【高9】最後の上り坂

城跡へ上がるとそこは見事な銀世界が広がりました。雪は10cm程もあり 歩くと足がずぼっと沈みます。【高10】

休憩場所に着くとさっそく持参のコンロでお湯を沸かします。この為に ボトルとは別に水を用意していたので今日は荷物が多いのでした。(疲れたぁ)

しっかり余熱をかけたコンロはゴーゴーと音を立て炎を上げます。順調順調。

今日は日曜日とは言え この雪の中年配ハイカーが次々と訪れます。

お湯も沸き 紅茶とコーヒーでティータイム。徐々に冷え始めた体に暖かいお茶が染み渡ります。

お茶を飲みながら ちょっと茶目っ気を出して 私の自転車を自立させます。そのままではちょっと雪が足りないので 足回りを固めます。 見事自立する自転車の出来上がりです。【高11】
後ろの石垣もなかなか趣があるでしょう。

彼は予想通り地元の人で我々が国道を走っている姿を家から見掛けたそうです。それにこのコースは週に1度位で走っているそうです。そりゃ 速いはずですね。

 


【高10】城跡の雪景色


【高11】唯我独尊、なんでこんな...

参考:

高取城跡は春の桜の頃や それに続く 山吹の頃も奇麗です。 この桜は【高10】に写っている木を別の角度から撮ったものです。


しばし歓談の後 彼は下山コースを、我々は城跡巡りと道を分けます。また どこかで再開することを約束して。

高取城の石碑で記念写真のあと展望のきく場所へ回ります。石垣の中を歩いていくと足跡の無い真っ白なところもあり 思わず寝転びに行きたくなりました。(童心に返る輪童ですね)

天守閣付近には多くのハイカーが昼食をとっていました。そう言えば もう昼です。食事中の横を通りすぎ 和歌山側の展望を眺めます。遠く大台の方まで白い山並みが広がっていました。我々の昼食は下山後として これからのルートを決めます。

 


高取城跡の碑


壷坂寺へ戻るルートは芸が無いということで 山道を下り 石舞台方面へ抜けるルートを選びました。途中 猿石から完全な山道になりますが 二人なら何とかなるでしょう。 下山ルートは本来なら雨水が流れてかなり深い溝なのですが今日は雪が押し固められて比較的降りやすくなっています。 所々乗れそうなところがあり 乾さんは乗って降りるのですが 私の方はというと ブレーキ部分に雪が溜まり満足に利きません。
スピード落ちないよー」とわめきながら 山側の斜面に突っ込んで停止。反対に落ちたら大事ですからね。 途中 階段部分もありさしものMTBも押すしかありません。

折りながら回りを見ると 高取城の石垣の苔むした姿を見ることが出来ます。かなり大きな山城だったことが推測されます。

 

やがて道の脇に奇妙な形の石が姿をあらわします。これが猿石です。【高12】『7』

実は 寒さでバッテリの消耗が速かった事、道が険しくて 写真を撮る余裕も無く下りは写真が無いんですねぇ。かろうじてここで撮ったのでした。

写真を撮っている最中 登っていく女性がいたのですが 我々はよっぽど変なオジサンに見えたのでしょうか足早に通り過ぎていったのでした。 そりゃ こんな所に自転車で来るなんて 普通じゃないよなぁ、うん。

猿石からは壷阪へ降りるコースと栢森へ抜けるコースがあります。今回は石舞台への周回コースにするため 栢森へ足を運びます。

 


【高12】奇妙な猿石。なんでこんなとこに
あるのでしょう

猿石からしばらくは比較的平坦な道で 乗ることも出来たのですが やはり しばらく行くと乗車不能になりました。それどころか 回りの杉の木に雪が止められたためか地膚が露出して 歩きにくい道となります。乗ったものの斜面突入停止を一度、足を滑らせ 見事に自転車に抱きつくこと一度と大変でした。でも MTBに乾さんは余裕があったようですね。(さすが)

しかし びっくりしたのは高取城に石垣はなんとこんな方にまであったことでした。

里に近づくにつれ 回りが明るくなり道も広くなってきました。ふと前を見ると車の走る姿が目に入りました。

車道だぁ! 

思わず声を上げます。あと少しです。最後の急斜面を降りると田んぼの畦を通って無事車道に降り立ちました。『8』

お疲れ様でした

まだまだ帰路の途中ですが 山道を抜けるとお互い声をかけているのでした。

ここからは 車道を今までの分とばかりに走ります。新しく開通していたバイパスは車も少なく快適に飛ばせます。でも 寒かったですけどね。

 


栢森の綱掛け神事
これは雌綱です。下流の
稲渕では雄綱がかかります


やがて石舞台へ到着。この辺は雪も日陰のところ以外は融けており 今まで通ってきた山道が別世界のようです。『9』


ここで 少し遅い昼食。考えてみると明日香界隈で食事をするのは始めてでした。

食事の間、お互い色々話を交わします。歳も近いせいか話は弾みます。つい数日前に知り合い、今日始めて顔を合わせたというのに もうずいぶん前から知っていたようなそんな感じでした。

食事の後 飛鳥歴史公園館へ戻り 今日のコースは終了です。自販機で買った飲物で打ち上げです。怪我やトラブルも無く終わり満足できる一日でした。

次回 ご一緒できることを楽しみに帰路をたどるのでした。


 
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